第145章 離婚後は他人になる

綾部栞は、彼が仏頂面のまま返事をしないのを見ると、淡々と視線を引いた。腕時計に目を落とし、片側の椅子に腰を下ろして待つ。

彼女の任務は伊沢赤司の胃の不調を治し、生活習慣を整えることだ。

つまり彼女は、伊沢赤司の主治医であると同時に、家庭医でもある。

伊沢赤司は、綾部栞が体温計をきちんと差し込ませたあと、ソファに退いて本を読み始めたのを見て、胸の奥に理由の分からない苛立ちが湧いた。まるで、自分だけが置き去りにされたみたいで。

「水、飲みたい」

低い声。少し掠れている。

綾部栞は本から目を上げない。

「このあと胃カメラです。何も口にできません。少し我慢してください。体温を測ったら、...

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