第148章 彼はただの患者にすぎない

佐野小雪は、綾部栞の瞳に宿る露骨な軽蔑を、はっきりと見て取っていた。

視線の色がわずかに揺れる。用意してきた口上も、その先に投げるつもりだった質問も、どう丸め込むかまで頭の中で組み立ててきた。なのに綾部栞の前では、相手の感情を一ミリも動かせないどころか、わざわざ自分から出向いて恥をかかされただけだった。

この三年で、佐野小雪には大勢の熱狂的な支持者がついた。

彼女はずっと「家柄がいい女」という像を丁寧に作り上げてきた。ファンもそれを疑わず、彼女を持ち上げ、褒めそやした。

褒め言葉を浴び続けるうちに、いつしか自分は本当にそういう生まれなのだと錯覚しそうになる。けれど骨の髄に染みついた劣...

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