第21章 彼は彼女を盗み見している

綾部栞は、傍らに放り出されていた携帯を見つめ、ふうっと息を沈めると、それを拾い上げてバッグにしまった。

坂口城からの電話など、彼女だって出たくはない。

けれど――。

伊沢赤司が突然、自分に手を貸してくれたことだけは、完全に想定外だった。

「……分かりました」

きっぱりと答えると、伊沢赤司の昏い黒い瞳が彼女に落ちる。男は冷ややかに口元を歪めた。得をした途端、急におとなしくなった――そう言いたげな笑みだった。

やがて視線を外し、淡々と告げる。

「祖母は退院してからまた風邪をこじらせた。しばらく本家で一緒に暮らして、そばにいてやれ」

綾部栞は一瞬、目を見開いた。口を開きかけたその時...

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