第27章 この男の細やかな気遣いの演技

玄関先から真っ先に響いた坂口城の声に、綾部栞は思わず眉をひそめた。

綾部栞にとって、坂口城は加賀峰と同じくらい鼻につく相手だ。

ああいう男の、どこが姉にふさわしいというのだろう。

瞳の奥にかすかな不安がよぎる。佐野爺さんがこの話に口を挟むのではないかと気が気でなくて、綾部栞はすぐさま佐野爺さんの隣にいる北条清森へ目を向けた。

綾部栞が知る限り、姉と付き合ったことのある男は、北条清森ただ一人だけだった。

伊沢赤司が横目でそれに気づく。彼女の視線が北条清森に落ちているのを見て、そっと腰をつまむように引き寄せ、自分のほうへと近づけた。深い黒の瞳に、わずかな不機嫌がよぎる。

綾部栞は視線...

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