第54章 彼女は純粋で可憐じゃない

綾部栞はすぐに感情を整え、赤尾婆様のベッド脇へと歩み寄った。

「こんにちは、赤尾奥様。須藤先生は本日お休みをいただいておりますので、私が検査を担当いたします」

綾部栞は丁寧な口調で告げた。

赤尾婆様は伊沢赤司と話していたところだったが、声を聞くと小さくうなずき、素直に検査に応じる。体調を説明しながらも、彼女は何度も綾部栞の顔を見た。

マスク越しでも、赤尾婆様は彼女だと気づいたのだろう。

「……あんた、本当に医者になったのね?」

綾部栞はわずかに動きを止めた。見破られたと悟り、口元にやわらかな笑みを浮かべる。

「赤尾婆様、お久しぶりです」

赤尾婆様の表情がぱっと明るくなる。

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