第62章 こんなにいいお兄さんがいて本当に羨ましい

太田は憤然とした顔のまま、立ち去った。

その背中を見送りながら、立花芳南はふっと顔色を落とす。

「普段は人畜無害ぶってるくせに、まさかあんな腹の底だったとはね」

「気をつけなよ。ああいうのに、足元すくわれるから」

綾部栞は小さくうなずき、手元の患者資料に視線を落としたまま、フィルムの一点を指で示す。

立花芳南も視線を戻し、綾部栞の治療方針の説明に耳を傾けた。

太田は綾部栞の診察室を出ると、そのままスタッフ用の物置へ戻り、荷物をまとめ始めた。途中、彼女のSNSのアイコン画像を保存し、さらに新しいアカウントを作り直す。

――自作自演の芝居を打つために。

伊沢グループ。

このとこ...

ログインして続きを読む