第71章 わざと彼女を伊沢赤司の前で恥をかかせる

伊沢赤司は伏せたまなじりで、腕の中の女を見下ろした。

「大丈夫か」

綾部栞は首を横に振る。足首の奥から、針で刺されるような痛みが細かく押し寄せ、思わず眉が寄った。

「平気です」

胸の内でそっと息を沈め、伊沢赤司の腕から身を引く。

一方、佐野小雪も坂東補佐に支えられ、床から立ち上がった。

彼女は少し離れた場所に立ち、伊沢赤司を見つめる。傷ついた色が、瞳いっぱいに滲んでいた。

転んだのは自分のはずなのに――伊沢赤司の視線は、一度も自分に留まらない。

佐野小雪は唇を強く噛み、結局、謝るしかなかった。

「ごめんなさい、綾部先生。わたし……」

綾部栞は最後まで聞かず、淡々と遮る。

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