第85章 綾部栞を取り戻したいなら、少し難しい

綾部栞は彼の様子を見て、かすかに眉をひそめた。視線を引っ込めると、表情をほとんど動かさないまま椅子に腰を下ろす。

佐野小雪は動画を見終えると、その場に静かに立ち尽くした。視線だけをそっと綾部玉季へ向ける。

綾部玉季は冷えた瞳で彼女を見返す。

「佐野補佐。こんな動画を見ても、驚いた顔をしないのね」

「まさか、前から何か知っていたんじゃない?」

佐野小雪は唇をきゅっと結ぶ。玉季が何を言いたいのか分からない。伊沢赤司の目の前で、入院中に病院で起きたことを話すべきか――一瞬、迷った。

あの頃、伊沢赤司は見舞いを口実に彼女のもとへ来ていた。けれど本当は、綾部栞に会いに来ていたのだ。

二人...

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