第89章 綾部栞の写真をじっと見つめてしばらく、表情は少し恍惚としていた

佐野小雪をブロックしてから、綾部栞は階下へ降りた。

太田さんが朝食をテーブルに並べ、栞が椅子に腰を下ろすのを見るなり、慌てて温かいミルクを一杯注いで差し出す。

受け取りながら、栞は何気なく尋ねた。

「暗証、変えた?」

太田さんはうなずく。

「変えました。旦那様がご自分で」

それを聞いて、栞はようやく安心したようにミルクを口へ運び、そっとひと口含んだ。

綾部父は庭先で体を動かしていたが、しばらくして果物の箱を抱えて戻ってくると、そのまま太田さんに渡した。

太田さんが蓋を開けた瞬間、艶やかな赤に目を奪われる。

「これ……ロザリオビアンコじゃなくて……ローマの赤いやつ? ルビーロ...

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