第90章 彼女と伊沢赤司の間には結局縁がない

立花芳南のほうが立て込んでいた。二人で話をまとめると、立花芳南はそのまま通話を切った。

綾部栞がスマホを置こうとした、その瞬間。また着信音が鳴る。

画面に出たのは見知らぬ番号だった。眉をひそめる。佐野小雪の知り合いかもしれない――そう思い、出ずに端末を伏せた。

しばらくして、今度は伊沢赤司から電話が入った。

綾部栞は杏色の瞳をわずかに沈め、通話ボタンを押す。

低く落ち着いた声が耳に届いた。

「明日は赤尾先生の誕生日だ。さっき、あの人が君に電話したけど出なかったから、俺から伝えろって」

綾部栞は一拍置いたが、返事はしない。通話を切ると、さきほどの知らない番号を探し出し、折り返した...

ログインして続きを読む