第92章 彼女が低姿勢で謝罪し、その様子は楚々として哀れだった

皆がグラスを手に取り、赤尾爺様自慢の自家製ワインを我先にと口にした。

綾部栞にも一杯、回ってくる。

乾杯の輪ができた瞬間、視線がいっせいに綾部栞へ集まった。

佐野小雪が首をかしげるように言う。

「このワイン、綾部先生のお口には合いませんか?」

そのひと言で、赤尾爺様の視線も栞に落ちた。

ワインを仕込む腕は、彼の誇りだ。

――以前なら、栞も間違いなく一口は味見していた。

だが今の彼女は妊娠中で、少し前には切迫の兆候まで出た。酒など論外だ。

「違います」

「私、お酒は飲まないんです」

赤尾爺様は「そうか」とうなずき、無理強いはしなかった。医者なら一滴も飲まない人がいても不思...

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