第94章 海外に行かないでくれる?

後部座席の二人が降りた途端、綾部栞の気分は少しだけ軽くなった。

そのまま車を走らせながら、彼女は忘れずに伊沢赤司へ尋ねる。

「どこに送ればいいの?」

その一言が、胸の奥をちくりと刺した。

このところ、伊沢赤司はずっと川辺真珠のところに身を寄せていた。綾部栞が少しでも探りを入れれば、居場所くらいすぐ分かるはずだ。

それでも彼女は知らない。

つまり――この間、彼女は一度も自分に関心を向けていなかったということ。

伊沢赤司は息を沈める。喉の奥に、重いものが詰まったようだった。

「先に綾部家へ戻れ」

綾部栞は横目で彼を見た。

「あなたを先に送ってから、私が綾部家に戻る」

伊沢赤...

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