第97章 姉の前では、何ひとつ隠せない

「具合でも悪いのか?」

伊沢赤司が足早に綾部栞の前へ回り込み、彼女の小さな顔が血の気を失っているのを見るなり、眉をきつく寄せた。

綾部栞はぼんやりと彼を見上げる。表情が、すぐには追いつかない。

そこへ立花芳南の助手の看護師が階段を下りてきて、栞と赤司が一緒にいるのを見つけると、慌てて駆け寄った。

「綾部先生、立花先生がすぐ上に来てほしいって」

綾部栞はうなずき、余計なことは聞かずに看護師の後を追って階段を上がった。

伊沢赤司も、当然のようにすぐ後ろにつく。

今夜は立花芳南の当直で、折悪く重い術後合併症の患者が出たところだった。

綾部栞は、こういう場面の対応がとにかく早い。人手...

ログインして続きを読む