第100章 何を疑うことがあるのか

霧島絢香は手を上げ、腰の脇をそっと揉んだ。

午後に桜井陽菜に突き飛ばされた痛みが、まだじんわり残っている。

ここが病室じゃなかったら、あの女の頬を二発は張り倒していた。

絢香はバッグを提げ、迷いなく奥へ進む。

わざわざ家からアロマの箱も持ってきた。P市から持ち帰ったもので、もう二年使っている。上品で、すっと澄んだ香り。きっと祖母も気に入ってくれる。

本当は霧島英昭に「行くな」と止められていた。

けれど、九条美幸がひとりでここに横たわり、誰にも丁寧に世話をされていないと思うと、じっとしていられなかった。

VIP病室の前。

絢香は足を止めた。

「……ドア、ちゃんと閉まってない?...

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