第109章 仮の婚約

たった一言。よそよそしくて、丁寧で――それが余計に刺さる。

桜井陽菜は胸の奥で苛立ちを噛み殺し、表情だけは相変わらず柔らかく整えた。

そっと視線を落とし、言いにくそうに切り出す。

「実は……今日来たの、もう一つ話したいことがあって」

九条雅人は短く「……ん」とだけ返した。

「言え」

「おばあさまを助けた件……病院の人に結構見られてしまって。外のメディアにも、少し噂が漏れてるみたいで……今、記事がすごいことになってるの。雅人、対応する人を出したほうがいいんじゃない?」

その瞬間、九条雅人の目が細くなる。

――メディアが嗅ぎつけた?

九条グループはこの病院に出資している。将来性...

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