第110章 婚約が決まった

霧島絢香はふと目を上げた。

「九条雅人が……桜井陽菜と婚約するの?」

同じ言葉をもう一度なぞる。声は羽のように軽く、波ひとつ立たない。

霧島英昭は、どうしようもないといった顔で息を吐いた。

「九条家がさっき出した公式発表だ。来週の月曜に、身内だけの控えめな式をやるらしい。絢香……この数年、お前がどれだけ悔しい思いをしてきたか、父さんだって分かってる」

言いながら、英昭は眉間にしわを寄せる。

「今は九条家と桜井陽菜の件が世間で大騒ぎになっててな。会社の株価も2ポイント落ちた。しかも陽菜は九条おばあさまを助けたんだろ? 婚約まで進むのも、筋としては分からんでもない」

傍らに立つ桜井...

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