第111章 何を見ているんだ

「安心して」

霧島雪乃は穏やかに微笑んだ。

「運転手に送らせるわ」

十分後。

車はゆっくりと病院を離れた。

霧島絢香は窓にもたれ、流れる街並みをぼんやりと眺める。凪いでいた瞳の奥に、ようやく小さな波が立った。

九条雅人は、ついに桜井陽菜と婚約する――。

……そうよね。そっちが「正しい」。

桜井陽菜が言っていた通り、九条雅人の心にはずっと彼女がいたのだ。

でなければ、ひとりの女を何年も傍に置いて、黙って許すはずがない。

霧島絢香はゆっくりと目を閉じた。

もう、どうでもいい。

あれは、あの人たちの問題。自分には関係ない。

車はほどなく霧島家の別荘へ滑り込む。

霧島絢香...

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