第117章 何を聞いたのか

霧島絢香はゆっくりと目を伏せた。

――そうじゃないの?

彼はこの結婚を、最初から嫌悪していた。痕跡ひとつ残したくないほどに。

それなのに今、とうに忘れ去られているはずの結婚指輪が、彼の小指にはめられている。しかも、誰の視線にも引っかからない死角に隠すように。

胸がきゅっと縮んだ。鈍い痛みが細かい針みたいに広がって、息が半拍遅れる。

桜井誠治が異変に気づく。

「絢香、どうした?」

霧島絢香は血の気のない笑みを作った。

「ううん。ちょっと疲れただけ」

「そうか。じゃあ散会したら先に送って帰る。たぶんこの婚約パーティーも長くならない。あとの二次会は出なくていい」

「うん」

霧...

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