第120章 彼は知ったのか?

霧島初音はまるで気にした様子もなく、甘ったるい幼い声で言った。

「おじさん、初音ね、すっごく会いたかったの。もう痛くない? ふーふーしてあげる」

九条雅人は、ふっと動きを止めた。

反射的に自分の手の甲を見る。そこに針の痕なんて、もうとっくに残っていない。

――それでも、この子は覚えていた。

九条雅人は口元をわずかに上げる。

「もう痛くない。ありがとう、初音」

二人の空気が妙に穏やかなのを見て、霧島絢香は伏せたまつげの奥に感情をしまい込んだ。

「……ほら、もう行くよ」

ところが初音は先に九条雅人の首へぎゅっと腕を回し、小さな体をゆらゆら揺らしてねだった。

「おじさん、一緒に...

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