第121章 九条美幸の目覚め

玄関をくぐった瞬間、視界いっぱいにやわらかなピンクが広がった。

ベッドサイドの棚にも窓辺にも、ぬいぐるみや絵本がぎっしり並んでいる。

どこを見ても、丁寧で、あたたかい。

霧島絢香が、この子に注いだ優しさの量が、ひと目で分かった。

九条雅人は部屋を見回し、言葉を失う。

――あの三年間、もう少しだけでも絢香に優しくできていたら。

初音は、本当に自分たちの娘になっていたのだろうか。

こんな「お姫さまの部屋」は、本来なら九条家の別荘にあるべきだ。

初音が彼の手を引っ張り、目をきらきらさせて言う。

「これ、うさぎさん! それからね、これこれ! これ、ママが教えてくれた絵!」

九条雅...

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