第125章 再び本邸へ戻る

霧島絢香は黙ったまま、彼を見ようともせず、返事もしなかった。まるで何も聞こえていないかのように。

街にはネオンが瞬いているのに、その光は彼女の胸の奥までは届かない。

踏みにじられた真心。見過ごされてきた献身……そんなものが、たった一言で帳消しになるはずがない。

九条雅人はハンドルを握る手に、じわりと力を込めた。

「……もう一度だけ、チャンスをくれないか」

霧島絢香は長い沈黙のあと、ようやく口を開いた。

「過去のことは、もういい」

「今は、おばあさまが先」

淡々とした声。感情の欠片もない。たったそれだけの言葉で、二人の間に線が引かれた。

――もう、戻れない。

九条雅人の瞳が...

ログインして続きを読む