第126章 頭から冷水

闇の中で、九条雅人の気配が圧し掛かってくる。逃げ場のない圧力。息をするのも苦しいほどに。

霧島絢香は、玄関と彼の腕の中に挟まれていた。背中は扉、前は胸板。退く場所など、どこにもない。

「……会いたかった」

不意に、彼が彼女の首筋へ顔を埋める。掠れた低い声が、耳たぶを震わせた。

「お前がいなくなって、2年と8か月だ」

霧島絢香の全身が、ぴたりと固まる。

……そんなに、正確に覚えてるの?

互いの吐息が、同じ場所に落ちるほど近い。

九条雅人が、彼女の弱いところを知らないはずがない。薄いタコのある指が腰のくぼみを押さえ、服越しにゆっくりと撫でる。

そして、そのまま――入り込んできた...

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