第141章 彼女の代わりになってどうする

十数分後。

桜井陽菜は得意げに髪をかき上げた。

チン——。

エレベーターの扉が開く。彼女は迷いなく、奥のVIP個室へと足を踏み入れた。

ヒールがタイルを叩き、「コツ、コツ」と乾いた音が響く。

スタッフが彼女を見て、思わず目を瞬かせる。

「失礼ですが……お客様、どちらさまでしょうか」

桜井陽菜は不機嫌そうに視線を投げつけた。

「見れば分かるでしょ? 私、雅人の婚約者よ。止めるつもり? 中で雅人が飲み過ぎて何かあったら、ただじゃおかないから」

スタッフの肩がびくりと跳ねた。

九条社長の婚約者——?

「も、申し訳ございません!」

慌てて何度も頷き、扉を押し開ける。

「どう...

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