第31章 捨てないでくれ

霧島絢香はすでに自室へ戻っていた。

その頃、九条美幸もとっくに床に就いていて、本邸はしんと静まり返っている。

絢香はドアを閉めるなり真っすぐ浴室へ向かった。ほかに構っている余裕はない。とにかく熱いシャワーを浴びたい、それだけだった。

重くて華やかなドレスもジュエリーも、いったん脇に置く。明日になれば使用人が片づけてくれる。

鏡の中の自分を一度だけ見つめ、息を深く吸う。すぐ背を向けて浴び、メイクも落とした。

……けれど、浴室から出た瞬間、足が止まった。

ソファに九条雅人がいた。だらりと背を預け、無造作にタブレットを指で滑らせている。画面の青白い光が、彫りの深い横顔を照らしていた。表...

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