第42章 体面を保つ道具

それを聞いて、霧島絢香が言った。

「……あんた、いつからそういう場が好きになったの?」

こんな席で、仲良し夫婦の芝居なんてする気はない。

しかも、離婚の話はもう詰めてある。あとはタイミングを見て手続きをするだけ――今さら何を装う必要があるのか。

九条雅人はドア枠にもたれたまま、からかうように口角を上げた。

「俺が行きたいんだ。お前に止められるのか?」

「九条雅人!」

靴を履き替える手を止め、霧島絢香は顔を上げて冷ややかに睨む。

「仲良しごっこ、癖になった? それとも私がみんなの前で引きつった笑顔のまま、あんたの芝居に付き合ってるのを見るのが楽しいわけ?」

冷たさと嘲りが、針...

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