第43章 もう気にしていない

車のドアを閉めた、その瞬間だった。霧島絢香は、胸の奥に押し込めていた感情の堤防が決壊するのを止められなかった。

三年間の結婚。注ぎ続けた想い。

それらは全部、九条雅人の沈黙の中で、音もなく壊れていった。

結局、涙は落ちた。

手の甲にぽたり、と。小さな水の輪がにじむ。

霧島絢香は鼻をすすり、唇の端を無理やり持ち上げた。

大丈夫。もう、どうでもいい。そんな顔を作ってみせる。

タクシーはクラブから勢いよく走り出し、絢香は海辺の住所を告げた。

ただ静かな場所が欲しかった。誰もいないところで、息をしたかった。

――クラブの前。

九条雅人は、テールランプが街の明かりに紛れて消えていく...

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