第44章 私は残る

しばらくして、九条雅人はゆっくりと顔を横に向けた。声は底冷えするほど低い。

「離婚……桜井誠治のためか」

鼻で笑う。その笑いは、嘲りだけでできていた。

霧島絢香はびくりと肩を震わせ、信じられないという目で彼を見た。次の瞬間、冷たい笑みがこぼれる。睫毛に涙を乗せたまま、瞳からは熱がすっかり消えていた。

「九条雅人……私のこと、そういうふうに思ってたんだ」

「じゃあ、他に何がある」

九条雅人が一歩踏み出す。言葉の端々に棘が刺さっている。

「一晩帰らないで、男と海辺で逢い引き。戻ってきたら離婚だ。あいつのためじゃないなら何なんだ」

逢い引き……?

霧島絢香は怒りで全身が震え、極ま...

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