第50章 彼は結婚指輪を拾い戻した

桜井陽菜の顔が一瞬こわばり、次の瞬間には天を仰いで泣きわめいた。声量だけはやけに大きい。

九条美幸は怒りで顔を真っ青にし、杖をつかんで振り上げる。

「この恥知らず! よくも九条家まで押しかけて、絢香にまとわりつく気!? 今すぐ出て行きなさい!」

桜井陽菜は立ち上がろうとせず、ただひたすら泣き続けた。

「おばあさま、私……本当に雅人さんを愛してるんです」

「それに私、妊娠してるんです。雅人さん、この子のこと……本当に喜んでて。どれだけ父親になりたがってるか、知らないでしょう……」

涙が切れた糸みたいに、ぽろぽろと落ちる。

その最後の一言が、霧島絢香の胸をさらにえぐった。

――子...

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