第51章 脆い彼

霧島絢香は、びくりと肩を跳ねさせた。

男の息は熱いほどに肌を焼き、声色には、かすかに脆さが混じっている。

――こんな九条雅人、いつぶりだろう。

思い当たるのは、三年前。桜井陽菜と別れ、九条グループが崖っぷちに追い込まれていた頃。

今のこの顔は……自分のせいなのか。

考える間もなく、酒の匂いが鼻を突き、胃の奥がきゅうっとねじれた。吐き気がせり上がり、危うくえずきそうになる。

生理的な不快感に押され、絢香は反射的に彼の胸を押した。

「雅人、酔っぱらってるなら、うちで騒がないで」

「世話してほしいなら、桜井さんのところへ行けば」

冷たく言い放つ。心配など、一欠片も滲ませない。

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