第62章 彼は後悔した

その水晶の置物は、決して高価なものじゃない。むしろ、安物と言っていい。

あれは当時、彼が何気なく彼女に渡しただけの品だった。九条雅人は唇をきゅっと結ぶ。そんなもの、とうに忘れていた。なのに――彼女はそれを寝室に、まるで宝物みたいに大事に飾っていたのだ。

水晶球は指紋ひとつないほど磨かれている。どれほど愛おしんでいたかが、嫌というほど伝わってくる。

――つまり、彼女はかつて……

眠っている彼女を見下ろしながら、九条雅人は胸の奥を大きな手で乱暴に握り潰されたような痛みに襲われた。何と呼べばいいのか、言葉が見つからない。

そっと手を伸ばし、頬に触れようとする。だが指先は途中で止まり、宙で...

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