第75章 本当に去った

霧島絢香は車のドアの脇に立ち、玄関先の両親を振り返った。鼻の奥が、つんと痛む。

霧島雪乃はすでに目元を赤くしていて、早足で近づくと絢香のコートの襟元を整えた。

「P市に着いたら、降りたらすぐ家に連絡しなさい。向こうには身内もいないんだから、ちゃんとご飯を食べて、徹夜で図面なんて描かないのよ」

「うん、分かってる。心配しないで」

霧島絢香は込み上げるものを必死に押し込み、笑ってみせた。

霧島英昭は傍らで、目に惜別を滲ませながらも低い声だけを落とす。

「外で無理をするな。P市は湿気があって冷えるらしい。厚着しておけ」

「うん!」

それ以上ここにいたら、振り返った瞬間に足が止まって...

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