第76章 九条美幸が後ろ盾となる

見当たらない。どこにも、あの見慣れた後ろ姿がいない。

「探せ」

九条雅人の冷え切った声が落ちた。

その瞬間、秘書がびくりと肩を跳ねさせる。

「き、霧島さん!」

張りのある声が人波を突き抜けた――はずだった。

だがターミナルは広すぎる。しかも人の流れは途切れない。叫び声など、あっという間に雑踏に呑まれていく。すでに中へ消えた細い背中も、振り返らなかった。

秘書は青ざめたまま九条雅人の顔色をうかがう。

「九条社長、あの……空席を確認しましょうか。ビジネスクラス、まだ1席あるみたいで……」

九条雅人は答えない。

ただ、目だけが底冷えするほど陰っていた。体側に垂れた手が、緩んでは...

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