第79章 ついに帰ることになった

桜井誠治は抱き上げられて運ばれていく赤ん坊を見つめ、短く頷いた。

「よし。母子ともに無事なら、それでいい」

それから三十分後。

霧島絢香と赤ん坊は、ストレッチャーで病室へ戻された。

「絢香、よく頑張ったな」桜井誠治が言う。

霧島絢香は娘の小さな手をそっと握り、目尻に笑みを浮かべた。

「決めたの。名前は霧島初音」

霧島の姓でいい。

九条家とも、九条雅人とも――一切、関係ない。

「いい名前だ。初音、初音ちゃん……早く大きくなれ」

桜井誠治は赤ん坊を覗き込み、柔らかく続けた。

「おじさんが、ママと一緒に守るから」

それからの日々、桜井誠治は母娘の生活を隙のないほど整えた。

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