第86章 再び本邸へ戻る

娘は昔から手がかからない子だ。霧島絢香は初音の頬にちゅっと口づけると、提携企業へ向かうため車を出した。

今回の案件は、本部から「全権代理で進めろ」と言われている。

まだ詰めきれていない細部も多い。

しかもこれは、本部と国内でも名の知れた大手不動産グループが組む、共同デザインプロジェクト。

成功すれば昇進も昇給も見えるし、霧島家が進める新規案件にも大きな追い風になる。

ほどなくして、車は不動産グループのビル前に滑り込んだ。

霧島絢香は表情ひとつ変えずロビーへ入ると、受付に告げる。

「こんにちは。予約を入れております」

受付が彼女の社員証に目を落とし、すぐに笑顔を作った。

「霧...

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