第89章 再び会う

千野秘書は、もはや何と言えばいいのか分からなかった。こんな福利厚生、そうそうない。

「では、会社でお待ちしましょうか」

だが男は、すでに遠くへ歩き去っていた。

その頃。

主寝室のバスルームには湯気が立ちこめ、白い靄がゆらゆらと揺れていた。

霧島絢香はシャワーを浴び終え、シルクのパジャマ姿で出てくる。時間を計っていたのか、ちょうどいいところでシャワーキャップを外した。

つややかな髪が肩に落ち、細い首筋を水滴がつう、と滑る。

部屋は――二年前のまま。

アロマの香りまで変わっていない。

懐かしさが胸をきゅっと締めつけ、霧島絢香は唇を結んだ。視線を切り、机へ向かう。タオルで髪を拭き...

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