第90章 二人が見つめ合う

その言葉は、まるで歯の隙間から絞り出すように吐き捨てられた。

この女は本当に、昔から変わらない。人を苛立たせるツボだけは、誰よりも心得ている。

九条雅人は錠剤を水もなしに喉へ押し込み、「……ふん」と鼻で笑った。

一睡もできない夜だった。

霧島絢香は柔らかな大きなベッドに横たわり、何度も寝返りを打つ。

ようやく空が白みはじめた頃、彼女はゆっくりとノートパソコンを閉じた。

仕事が山ほどあるわけじゃない。

ただ――この家だと、どうしても落ち着いて眠れないだけ。

外が薄明るくなっていくのを見て、絢香は初音を連れて一刻も早く本邸を出たくなった。

ここに一秒でも長くいると、息が詰まる。...

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