第94章 他人同然

口を開こうとした、その瞬間。壁にもたれて立つ霧島絢香の姿が視界に入った。

「……状況は?」

桜井陽菜の顔色が、ぴしりと固まる。

――私を素通りして、絢香に聞くの?

霧島絢香はゆっくりとまぶたを上げ、九条雅人を見た。しばしの沈黙ののち、淡々と告げる。

「蘇生はできました。でも、おばあさまは急性の心脳合併症です。最良でも……今みたいな植物状態。目を覚ます確率は、かなり低いそうです」

九条雅人の瞳が、わずかに縮む。深い眼差しの底で、波が立った。

「……どうして、急に」

掠れた声。

「医師の話だと、強いストレスで心身に負荷がかかったのが引き金だそうです。感情の急激な揺れで――」

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