第96章 黒い心の介護士?彼女が代わってやる

九条雅人の奥行きのある細長い眼差しが桜井誠治に落ちた瞬間、そこには微塵の温度もなかった。

視線がぶつかる。

桜井誠治は怯むどころか、口元に春風のような笑みを浮かべる。

「それじゃ九条社長の邪魔はしません。俺、まだ用があるんで」

言い終えるや否や、彼は隣の白いビルへと真っすぐ歩いていった。

風がひゅう、と頬をかすめ、地面の落ち葉を数枚さらっていく。

空気に残るのは、薄い煙草の匂いだけ。

九条雅人の胸の奥で、理由の分からない苛立ちが膨らんだ。

――それに、かすかな鈍い痛みまで。

……

病院。

VIP病室の前。

桜井陽菜は素色のロングワンピース姿で、今日も時間ぴったりに現れ...

ログインして続きを読む