第11章 林田美月の挑発

冷たい月明かりがレースのカーテン越しに差し込み、ベッドの上では薄い影が毛布にくるまっている。ダブルの枕が、まるで冗談みたいだった。

長谷川遥斗が出ていってから、部屋は完全に冷え切った静けさに沈んだ。諏訪詩織は仰向けのまま天井を見つめ、ぼんやりと時間を溶かす。

――ピコン。

スマホの通知音で我に返る。気づけば、いつの間にか涙が落ちていて、枕をじっとり濡らしていた。

頬をぬぐい、詩織は自嘲気味に小さく笑う。もう手放すと決めたのに。甘い記憶の輪郭に触れるだけで、どうしても涙が出る。

あの頃の私たちは、あんなに幸せだったのに。

どうして、私の知らないところで壊れてしまったのだろう。

胸...

ログインして続きを読む