第110章 高橋夫人の苦境

高橋夫人はソファに斜めに身を預け、奥行きのある眼差しで諏訪詩織を淡々と見据えた。紅い唇がわずかに弧を描く。

「諏訪さん、服飾デザイナーだと伺いましたけれど?」

諏訪詩織は小さくうなずく。

「また林田美月から?」

高橋夫人は肯定も否定もせず、ただ笑って、傍らのスーツ姿の秘書へ軽く手を振った。

ほどなくして、数人がかりで運び込まれたのは、レトロな宮廷風のロングドレスだった。

型からして、どう見ても前世紀の品。古びてはいるのに、サテンの艶が残っていて、年月をまとった優雅さと気品が消えていない。

諏訪詩織の瞳がわずかに揺れる。眉を上げ、高橋夫人を見た。

「……夫人、これはどういうおつ...

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