第114章 条件を一つ約束してくれ

レストランの空気が、ふっと静まり返った。

諏訪詩織は手元のカトラリーをそっと置き、顔を上げて長谷川遥斗を見た。さっきまでの温度が、すっと引いている。

「見たわ。だから……説明する?」

長谷川遥斗は眉をわずかに寄せた。

冷静すぎる。夫の浮気を掴んだ妻の顔じゃない。

――気にしていない?

その可能性が頭をよぎった瞬間、遥斗の目に剣呑な色が宿る。彼は勢いよく詩織の手首を掴み、身を乗り出した。

「詩織……お前、まだ俺のこと愛してるのか?」

答えが欲しくてたまらない。必死に彼女の瞳を探る。

けれど、そこにあるのは凪いだ水面みたいな静けさだけだった。

胸の奥が、がくんと抜け落ちる。

...

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