第18章 彼女は君と比べるに値しない

長谷川遥斗は、彼女が完全に怒りの渦中にいると悟った。いまは言葉を重ねるほど火に油だ。だからそれ以上、刺激しない。

車内はしんと静まり返った。

「男のくせに、引き際だけはいいんだ」

そんなふうに思ってしまう自分が、諏訪詩織はまた腹立たしい。胸の奥に何かが詰まって、吐き出し方もわからない。結局、目を閉じて黙り込むしかなかった。

三十分後、車は別荘の前で停まった。

長谷川遥斗が降りてドアを開けようとした瞬間、詩織は自分で目を開け、彼を押しのけるようにして降りると、すたすたと玄関へ向かった。

「おい……」

遥斗は小さく息を吐き、足早に後を追う。

使用人が詩織の姿を見つけ、ぱっと顔を明...

ログインして続きを読む