第20章 帰らない

「今から迎えに行ったほうがいいか?」

諏訪詩織が長谷川遥斗の別荘を出て別の場所に移ったと聞くなり、牧野徹はそう口にした。

詩織は立ち上がって水を注ぎ、一口含んでから答える。

「私はここで大丈夫。来ないで」

「でも……」牧野徹の声はまだ不安げだった。

あの日、目の前で詩織が連れていかれるのを見ていながら、何もできなかった。家に帰ってから、悔やんでも悔やみきれなかったのだ。

彼が何を心配しているのか、詩織にはわかっている。窓の外に目を向けると、美しい瞳に冷えた色が走った。

「私を連れ戻してから、あの人は警戒してる。周りに人をつけて見張らせてるの。あなたが顔を出したら、すぐ騒ぎになる...

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