第35章 誘拐

彼女の言葉に、男たちは一瞬で色を変えた。こちらを見る目は険しいのに、どこか怯えが混じっている。

「兄貴……あいつの言ってること、ほんとなんすか。今日ここで終わりとか、ないっすよね」

「そうだよ。金はよかったけど、俺は死にたくねえ」

後部座席の二人は完全に腰が引け、迷いが表に出ていた。

だがハンドルを握る男だけは、妙に冷静だった。諏訪詩織を逃がしたところで自分たちに生き道はない。そう腹を括っているのだろう。男は唾を吐き捨て、罵声を飛ばした。

「調子乗んなよ。俺をビビらせるつもりか? お前を掴んでりゃ多少は脅しになるが、逃がしたら俺らがどうやって死ぬか分かったもんじゃねえ」

その一言...

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