第63章 彼女を甘やかしすぎた

諏訪詩織はすでに身ごもっている。いま医者に診せたら、妊娠は即座に露見する。そうなれば長谷川遥斗のもとを離れるのは、ますます難しくなる――。

長谷川晴香の、今にも殺しそうなほど露骨な嫌悪の視線を浴びながら、詩織は唇をきゅっと結んで拒んだ。

「体は平気です。検査は必要ありません」

だが長谷川晴香は、一言で引き下がるような女ではない。薄い唇を引き結び、吐き捨てるように言った。

「長谷川家に嫁いで何年? お腹はずっと音沙汰なし。うちは跡取りを待ってるのよ。産めないなら、別の女に替えるだけ」

「母さん!」

長谷川遥斗が顔を沈め、露骨な不快を滲ませる。

彼は諏訪詩織を愛している。取り替える...

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