第81章 誰が通報したのか

諏訪詩織は無罪で釈放された。

――けれど、自分のために証言した人物が林田美月だと聞かされた瞬間、胸の奥に小さな引っかかりが生まれた。

警察署を出たころには、徹夜の疲れが骨の髄まで染みていた。顔色は青白く、足取りもどこか頼りない。

段差に気づくのが遅れ、ぐらりとよろける。

その腕を、すっと支えた手があった。

「危ない」

牧野徹だった。反射神経の鋭さに助けられ、詩織はどうにか体勢を立て直す。

顔を上げると、翡翠色の瞳が心配そうに揺れていた。

「平気。ちょっと考えごとしてて、足元見てなかっただけ」

徹はそっと手を離す。指先の温度が、名残のように残った。

「林田美月が、どうして急...

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