第94章 美しい履歴書

諏訪詩織が事務所を出た途端、スマホがひっきりなしに震えた。

眉を寄せて画面を一瞥する。案の定、長谷川遥斗からのメッセージだ。

最近の彼はやけに距離が近い。理由が読めず、ただ絡みつかれているようで鬱陶しい。

適当に二、三言返してスマホをバッグへ戻した、そのとき。

「詩織」

呼ばれて顔を上げると、車にもたれた牧野徹がいた。端正な立ち姿。穏やかな表情。深い潭のような瞳に、淡い笑みが揺れている。

「徹さん?」

諏訪詩織は少し迷いながら近づいた。「どうしてここに?」

「飯、奢らせてくれないか」

両手をポケットに入れたまま、さらりと言う。背筋の通った体躯に、自然と漂う圧。上品で、どこか...

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