第96章 独占欲が疼く

長谷川遥斗の動きが、宙でぴたりと止まった。

座席に横たわる諏訪詩織を見下ろす。海藻みたいな長い髪が滝のように広がり、頬にはうっすらと紅が残っている。なのに、こちらを見返してくる瞳だけが――氷で研いだ刃みたいに冷たかった。

いちばん近いはずの相手なのに。

その視線ひとつで、まるで骨の髄まで憎い相手にでもなったような気分になる。

遥斗がそれ以上動かないのを確認すると、詩織はふっと息を吐き、力いっぱい彼を押しのけて起き上がった。乱れた服を直しながら、淡々と言う。

「説明できることは全部した。信じないなら、もうどうしようもない」

その冷えた声に、遥斗のまぶたが嫌に跳ねた。

「……そうい...

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