第103章

早乙女星奈は慌てて立ち上がろうとしたが、後藤辰和の胸元で手を彷徨わせ、足場が定まらないのか、何度も座り込みそうになる。

後藤辰和は、反射的に彼女の腰を支えた。

胃の奥から吐き気が込み上げる。実に滑稽な光景だ。

そこにいるのは、一人は私が法律上、夫と認めざるを得ない男。もう一人は、その夫の義姉さんだ。

彼らは恥じらいもなくオフィスでこんな真似をしている。恐らく、これが初めてのことではないのだろう。

実のところ、二人の関係など私にとってはどうでもいい。私が心底腹を立てているのは、後藤辰和が故意にメッセージを無視し、面会を拒み、私の時間を浪費させて人命救助の機会を遅らせていることだ。

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