第153章

温水寧凪の視点

頭の中が数秒間、真っ白になった。

後藤寧々は確かに、彼は記憶喪失で私のことは覚えていないと言っていたはずだ。

それなのに今、彼は私の目の前に立ち、正確に私の名を呼んだのだ。

私は胸の内で荒れ狂う動揺を瞬時に押し殺し、必死に平静を装った。絶対に隙を見せてはならない。

後藤辰和はあまりにも鋭い。少しでも違和感を抱かれれば、彼の性格上、地の果てまで私を調べ上げようとするだろう。

提携先の太田は私たちの異変に気づく様子もなく、熱心に紹介を続けている。

「温水さん、こちらが後藤さん。今回のプロジェクトにおける最大の出資者です。そして後藤さん、こちらが温水寧凪さん。今回共同...

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